美術館に行ってきました (2012/05/30) 第8回
私は美術館に行くのが好きです。
最近は、ボストン美術館展と、セザンヌ展に行ってきました。
どちらも素晴らしいものでした。
昔は美術館に行っても、作品の素晴らしさは全く分からず、ただ退屈で苦痛でした。
その作品の素晴らしさが分からない自分が恥ずかしく、何とかその文化的な価値を分かろうと必死に見ていました。
構図とか、作家が伝えたい事とか、文化的な歴史とか、技術とか、他の画家たちに与えた影響とか、
必死に考えながら見ていました。
それをやめてみようと思い、自由に自分の感覚で目の前の作品にむかうようになって、ようやく美術館に行くことが楽しくなってきました。
解説を聞いたり読んだりせず、ただ自分が好きかどうかだけを感じながら、きままに歩きます。
もしこの中で、ひとつだけもらえるとしたら、どれをもらおうかな、なんて考えながら。
一番高いものを、なんてことは考えません。
部屋にあったら、毎日が楽しいかな、癒されるかな、なんて考えながら作品を見ていると、楽しいし、自分の好みが分かってきます。
案外私は、地味なものより、ちょっと、けばけばしいかも、と思われていたものが好きみたいです。
狩野永徳は大変感動しました。
国宝の檜の絵を見た時のことです。隣に飾ってあったおおきな2匹の獅子の絵も大変迫力があったのですが、
それよりも、その檜の絵の方がよほど迫力があるのです。
樹は何も言わないし、動きません。獅子の方がよっぽど恐いはずです。
なのにあの、檜の、独特な迫力は、すごいものでした。
確かに樹は何千年も、ただ黙って大地に根をはり、生きています。
どんな風雪にも耐え、時代を超え、自らの形を変えてでも、我慢強く生きていきます。
地球上の生き物の中で一番強いかもしれません。
樹には神が宿ると、昔の人は考え、敬ってきました。科学が発達していなかった昔の人こそ、本当の強さというものが感じられていたのかもしれません。
日常生活に追われ余裕をなくしてしまいそうな時、美術館巡りは、自分にとって大切な事を感じさせてくれる素敵な時間を与えてくれるのです。